Kissのひとりごと

日々のいろいろな場面で感じた心象風景や人生を三倍楽しむために工夫してきた小さなヒント……
などを気ままに綴っていく1片1片がやがて、Kissファンの楽しみとなれば・・・

~~~~  桜 さくら サクラ  ~~~~

Vol.ⅩV  March 1. 2018

例年2月の下旬頃、遠くサクラの木々たちに目を向けると、かすかにピンク色が感じられ、私の中で「春」という言葉が胎動し始めるのだが、さすがに厳しい寒さの続いている今年の冬は、なかなか春の気配が見られず、恋しく想うばかりである・・・・とはいえ、少し気温が上がった日などは陽射しに春が見え隠れし、ちょっと気分が華やいでくる。
いつの頃からか、「サクラ」を心待ちするようになり、銘木といわれるサクラを訪ねてみたいと思うようになった。福島県三春の「薄墨桜」を一度見たいと深夜に高速を飛ばして、見に行ったことがある。大好きな評論家 小林秀雄が愛してやまなかった桜であり、瀕死寸前から人々の努力により守り抜かれたという逸話にも惹かれ、訪ねたのである。確か、7分咲き程度だったと思うが、その勇姿と美しさには息をのむものがあった。その場を立ち去りがたい凛とした姿とどの角度からみても隙のない佇まいは、圧巻であった。

今でも印象に残っている美しいサクラたちがいる。冒頭の「薄墨桜」は別格として、伊豆高原駅から続く桜並木、お彼岸の頃偶然通りがかったのだが、ほとんど人影のない桜並木は満開で、はらはらと風に舞う花びらが朝陽の光と相まってそれは、それは幻想的で桜一色の風景を独り占めできた幸せな時間であった。
意外と種類が多くて長い期間それぞれのサクラを楽しめるのが新宿御苑だが、お薦めは、朝一番の静かな時間である。のんびり散策すると都会のど真ん中でありながら桜を存分に堪能でき、優しい気分に浸れるのである。この御苑で、ある年の春、気候の影響で桜の開花が遅れ気味だったせいなのか、全ての桜が一斉に開花したタイミングに出会い、まさに百花繚乱、しかも花びらを敷き詰めたかのような一面ピンクの絨毯は、歩くのがもったいないほどで忘れられない景色の一つとなっている。
 六義園の夜桜も棄てがたい大木である。しだれ桜ゆえの妖艶な色気を魅せてくれ、なんとも不思議な世界に誘ってくれる。しかも少し早めに開花するので、都内での「サクラ」は毎年ここから始まる感じがある。これだけ大きなしだれ桜なので、日中もさぞかし美しいであろうと訪れたことがあったが、やはりライトアップされた夜桜の匂い立つような美しさにはかなわなかった記憶がある。


また、ほぼ日本全国隅々までサクラが咲いているということにも日本人特有の DNAが関係しているのか、嬉しくなる。この時期、新幹線の車窓をみてもほとんど絶え間なくサクラを写しているし、たいていの川の畔にはサクラ並木、こんな山奥にも人知れず懸命に咲いているヤマザクラを見つけたり・・・とサクラ自慢には事欠かないほどである。
そして、個人的には、いつか南から「サクラ」を追いかけて「サクラ」と共に北上する旅をしてみたいものである。それは、南北に長い日本ゆえ 23ヶ月かけて「サクラ」の名所を満喫できる贅沢この上ない旅となるに違いない。
 最後に蛇足だが、期間限定のサクラの香りを楽しめる地ビールを昨年発見し、サクラを愛でながら、その美味しさと香りに酔うのもまた幸せな時間であったことを追記しておくことにする。 


「サクラ」は、やはり富士山と同様、日本人の DNAに深く刻まれているようで、毎年 3月になると、桜開花予報や桜便りが飛び交い、ネット上でもライブカメラで配信されたりして、我が家でも日々お目当ての桜情報を検索することになるのだが、なかなか、気候と開花はこちらの注文通りにはいかないようで、せっかく足を運んでも期待した景色に遭遇出来ない方が多いのである。
むしろ、偶然に出会ったサプライズプレゼントのような風景の方が印象深く、再び、同じ風景を求めても二度と会えないからこそ、「サクラ」への想いがいっそう募るのかもしれない。



「サクラ」には、また、様々な言い伝えや、サクラの木の根元には死体が埋まっておりその血であれほどまでに美しい色に染まるのだという小説だったか・・そんな話も聞いたことがある。おどろおどろしい話ではあるが、「サクラ」の可憐な蕾から、乙女のような開花、強くて美しい大人の女性を想わせる満開、そしてあでやかな色気を感じさせる散り際、と短い間にみせてくれるその時々の表情が空想をかき立てるのかもしれない。しかもその散り方は、潔いほど気持ち良く、だから、男の花なんだよ、と昔誰かがいっていたのを思い出す。




「サクラに想いを馳せ、サクラを愛おしく想えることに感謝しつつ、全てのサクラたちに乾杯!」というひとりごとでした。